相続した実家や、使っていない戸建てを所有していると、
「少し直せば貸せるのでは?」
「売るより家賃を受け取った方が得では?」
と考えることがあります。
ただ、空き家を賃貸に出すかどうかは、家賃だけでは判断できません。
貸すためには修繕費がかかり、賃貸開始後も空室、管理費、固定資産税、保険、設備故障などの負担が続きます。
そのため、横浜市の空き家を「貸すか、売るか」で迷ったら、まず次の3つを確認します。
- いくらで貸せるのか
- 貸せる状態にするまで、いくらかかるのか
- 今売った場合、いくら手元に残るのか
大切なのは、「貸せるか」ではなく、「貸した後にいくら残るか」と「今売った場合の手残り」を比べることです。
この記事では、空き家を貸すための修繕の考え方、費用の目安、賃貸収支の見方、売却との比較方法を整理します。
空き家を貸す前に、まず確認したい3つの数字
空き家を見て、いきなりリフォーム内容を決める必要はありません。
先に確認したいのは、想定賃料・必須修繕費・現在の売却手残りです。
想定賃料はいくらか
最初に、その家をいくら程度で貸せるのか確認します。
横浜市内でも、
- 駅からの距離
- バス便
- 建物の広さ
- 駐車場の有無
- 築年数
- 坂や高低差
- 周辺の賃貸需要
などによって賃料は変わります。
そのため、「横浜市の戸建てなら月○万円」と市全体の平均だけで判断するのは適切ではありません。
現況での賃料と、必要な修繕後に狙える賃料の両方を確認すると、工事費をかける意味が見えやすくなります。
貸すために必要な修繕費はいくらか
次に、賃貸に出すために本当に必要な工事を確認します。
ここで大切なのは、
「古いところを全部新しくする」ことと、「貸すために必要な修繕」は別
という点です。
雨漏りや給湯器故障などは放置できませんが、正常に使える設備を「古いから」という理由だけで交換しても、その費用を家賃上昇で回収できるとは限りません。
まずは必須修繕を切り分けます。
今売った場合の手残りはいくらか
賃貸化を検討するときでも、売却価格は先に確認しておきます。
たとえば300万円かけて修繕して貸すとしても、現在の状態で十分な価格で売却できるなら、
「300万円を投じて何年もかけて回収する必要があるのか」
という比較ができます。
見るのは売却価格そのものではなく、
売却価格 − 売却費用 − 税金等 − ローン残債等
を踏まえた手残りです。
どこまで直せば貸せる?空き家の修繕は3段階で考える
空き家の修繕は、
安全性・法令上の確認 → 生活できる機能 → 募集力
の3段階で考えると整理しやすくなります。

最優先は安全性や法令上の確認が必要な部分
まず見るのは、安全に住める状態かどうかです。
たとえば、
- 雨漏り
- 構造上の劣化や傾き
- 危険な電気配線
- ガス設備
- 給排水の漏水
- 火災警報器
などです。
貸主には、借主が通常使用するために必要な修繕を行う義務があります。
また、借主の責任ではない事情で住宅の一部が使用できなくなった場合は、状況によって賃料減額につながることもあります。
つまり、内装をきれいにする前に、安全に住める状態を作ることが最優先です。
次に「普通に生活できる状態」を整える
安全性を確認したら、住宅として必要な設備を見ます。
代表的なのは、
- 給湯器
- キッチン
- 浴室
- トイレ
- 洗面設備
- 鍵
- 建具
などです。
ここでも、古いこと自体が交換理由になるわけではありません。
正常に使えるのか、入居後すぐ故障する可能性が高くないかを見て判断します。
クロスや床などの見栄えは最後に判断する
最後が、募集力を高めるための工事です。
- クロス
- 床
- 畳
- 襖
- 外観
- 庭
- ハウスクリーニング
などが該当します。
もちろん見た目は入居者募集に影響します。
ただし重要なのは、費用対効果です。
50万円追加でリフォームしても、家賃や成約スピードがほとんど変わらないなら、その投資は回収しにくくなります。
賃貸住宅だからといって、必ずしも「新品同様」にする必要はありません。
空き家を貸すための修繕費はどれくらい?
工事費は建物の状態、広さ、仕様、施工範囲によって大きく変わります。
そのため、一律に「空き家を貸すには○万円」とは言えません。
以下は、全国のリフォーム事例等から見た参考レンジであり、横浜市の統一相場ではありません。
| 工事 | 概算の目安 |
|---|---|
| クロス張替え | 約800〜1,500円/㎡ |
| キッチン交換 | 約80〜130万円程度の例 |
| 戸建て浴室 | 約80〜140万円 |
| トイレ | 約20〜40万円程度 |
| 外壁塗装 | 約60〜150万円+足場等 |
| 屋根の軽微な改修・塗装 | 約50〜100万円程度の事例帯 |
| 残置物撤去 | 3DK・3LDKで約15〜30万円程度の事例 |
あくまで目安です。
同じ外壁工事でも、塗装だけで済む場合と、下地まで傷んで張替えが必要な場合では金額が大きく変わります。
雨漏りやシロアリも、軽微な処置で済む場合と、構造材の補修まで必要な場合では別工事です。
見積書は「必須修繕」と「募集力を上げる工事」に分ける
見積を取るときは、
A:貸すために必要な工事
と、
B:やれば募集力が上がる工事
に分けてもらうと判断しやすくなります。
たとえば、
A
- 雨漏り修繕
- 給湯器交換
- 漏水修理
- 危険な電気設備
B
- 全室クロス交換
- キッチンのグレードアップ
- 外観デザイン変更
という分け方です。
「最低限なら150万円」「全部やれば350万円」と選択肢が見えれば、賃料とのバランスも比較しやすくなります。
「修繕費÷家賃」では、本当の回収期間は分からない
空き家を賃貸化するとき、特に誤解しやすいのが回収期間です。
たとえば、
- 修繕費:300万円
- 月額家賃:12万円
なら、
300万円 ÷ 12万円 = 25か月
です。
一見すると、「約2年で修繕費を回収できる」と見えます。
でも、家賃12万円がそのまま利益として残るわけではありません。
家賃からは空室・管理費・税金・修繕費などが出ていく
記事用のモデルとして、
- 月額家賃:12万円
- 年間満室賃料:144万円
- 空室損:8%
- 管理費:実収入の5%
- 固定資産税等・保険:年間18万円
- 修繕・設備更新積立:満室賃料の10%
- 募集・退去費:満室賃料の5%
と仮定します。
この場合、
年間満室賃料144万円
から各費用を差し引くと、
税引前・借入返済前のモデル上の実質手残りは約86.3万円
です。

これは横浜市の平均値ではなく、あくまで説明用のモデルです。
重要なのは数字そのものではなく、
家賃=利益ではない
という点です。
モデルケースでは回収に約3.5年かかる
先ほどのモデルなら、
300万円 ÷ 86.3万円
で、
約3.5年
です。
家賃だけで計算した約2年とはかなり違います。
さらに、この計算には所得税・住民税、借入返済、突発的な大型修繕などは含めていません。
そのため、「3.5年なら得」と決めるための数字ではなく、実際の年間手残りを見るための考え方として使います。
空き家は「貸す」と「売る」のどちらがいい?
数字がそろったら、貸す場合と売る場合を比較します。
主な選択肢は次の4つです。
| 選択肢 | 特徴 |
|---|---|
| しっかり修繕して貸す | 初期費用は大きいが、募集力や賃料を高められる可能性 |
| 最低限修繕して貸す | 初期費用を抑えながら家賃収入を得る |
| 現状のまま売る | 修繕費をかけず比較的早く現金化 |
| 修繕してから売る | 工事による価格上昇が工事費を上回るか確認が必要 |
賃貸に向いている空き家
- 修繕費が比較的軽い
- 周辺に戸建て賃貸需要がある
- 想定賃料が取れる
- 長期保有する予定
- 大きな構造上の問題がない
- 管理を委託できる体制がある
売却に向いている空き家
- 賃料に対して修繕費が大きい
- 雨漏りや構造問題など大型工事が必要
- 相続人で現金分配したい
- 管理を続けたくない
- 遠方に住んでいる
- 将来の建替えや売却に大きなリスクがある
判断基準は、貸せるかどうかではなく、貸した場合と今売った場合の手残りを比較することです。
横浜の古い戸建ては、修繕費以外も確認する
以下は横浜特有の問題ではありませんが、横浜の古い住宅地では確認しておきたい項目です。
接道・再建築の問題
建築基準法では、原則として敷地が道路に2m以上接している必要があります。
現在建物が建っていても、将来同じように建替えできるとは限りません。
接道条件は今貸せるかどうかとは別ですが、将来の売却価値に影響する可能性があります。
擁壁・崖・高低差
横浜には坂や高低差のある住宅地も多くあります。
擁壁や崖に問題がある場合は、補修費が大きくなることがあります。
室内をきれいにしても、その後に擁壁で大きな費用が発生すれば、賃貸収支の前提そのものが変わります。
旧耐震・雨漏り・傾きなど建物状態
旧耐震住宅だからといって、直ちに貸せないわけではありません。
ただし古い木造住宅では、築年数だけで判断せず、雨漏り、シロアリ、傾きなどの状態を確認します。
私道・境界・越境など権利関係
私道、隣地との越境、境界未確定なども将来の売却に影響する場合があります。
賃貸中は問題がなくても、数年後に売却するときに調査が必要になることがあります。
相続した空き家は「とりあえず貸す」前に確認する
相続した実家の場合は、通常の空き家とは別に税制を確認しておきます。
一定の条件を満たす相続空き家では、売却時の譲渡所得から最高3,000万円を控除できる特例があります。
この特例では、一定の要件の一つとして、相続から譲渡までの間に対象家屋や敷地を貸付けの用に供していないことが求められます。
そのため、
「まず数年間貸して、その後売ればいい」
と決める前に、特例の適用可能性を確認する必要があります。
一度貸したことで、売却時の税負担に影響する可能性があるためです。
詳しくは関連記事で整理しています。
横浜の空き家は、修繕見積だけで決めない
空き家を貸すか売るか判断するときは、
- 想定賃料
- 必須修繕費
- 税制・権利関係
- 建物や敷地の将来リスク
- 現在の売却価格
を確認します。

そのうえで、貸す場合の実質手残りと、今売る場合の手残り・負担を比較して決めます。
家賃が高いから必ず貸す方が得というわけでも、修繕費が高いから必ず売却すべきというわけでもありません。
物件の状態、賃料、修繕費、将来リスク、税制、保有方針によって答えは変わります。
貸すか売るか迷っている段階でもご相談いただけます
横浜不動産総合窓口では、
「貸す場合」と「売る場合」の両方を比較してから方向性を決めたい
というご相談にも対応しています。
まだ修繕内容を決めていない段階でも構いません。
まずは、
賃料査定・必要な修繕・現在の売却価格
を並べて、どの選択肢が現実的か整理するところから始めます。
