相続した実家や空き家について、
「すぐ売るのはもったいない」
「とりあえず数年貸して、あとで売ればいい」
と考えることがあります。
ただし、相続した空き家では、賃貸に出したことが、その後の売却時に使える税制へ影響する場合があります。
特に確認したいのが、一定の要件を満たす相続空き家を売却した場合に、譲渡所得から最高3,000万円を控除できる特例です。
この特例には複数の要件があり、その一つとして、相続から譲渡までの間に対象となる家屋や敷地を貸付けの用に供していないことが求められます。
そのため、
「まず貸してみて、合わなければ売る」
という順番が、必ずしも有利とは限りません。
相続した空き家は、今売った場合の手残り、貸した場合の家賃収入、必要な修繕費、管理負担、売却時の税制を確認してから方向性を決めることが重要です。
相続した空き家は「とりあえず貸す」を決める前に確認
相続した空き家では、通常の賃貸物件とは違い、売却時の税制が判断を変えることがあります。
まず比べたいのは、
「貸した場合に残る金額」と「今売った場合に残る金額」
です。

貸せば家賃収入を得られる
賃貸に出せば、毎月の家賃収入を得られます。
ただし、空室、管理費、修繕、固定資産税、保険、入退去に伴う費用なども発生します。
そのため、家賃の総額ではなく、各費用を差し引いた年間の実質手残りで考えます。
売れば管理・修繕負担を終えられる
売却すれば、まとまった現金化ができ、その後の管理や修繕負担はなくなります。
一方で、売却時には譲渡所得や税負担を確認する必要があります。
相続した空き家では、3,000万円特別控除の適用可能性も含めて、売却後の手残りを見ることが重要です。
相続空き家の3,000万円特別控除とは
一定の条件を満たす被相続人の居住用家屋やその敷地を売却した場合、譲渡所得から最高3,000万円を控除できる特例があります。
2026年時点で確認できる制度では、2027年12月31日までの譲渡が対象となります。
ただし、相続した実家であれば自動的に適用される制度ではありません。
対象となる家屋には条件がある
対象家屋には、たとえば被相続人の居住用であったこと、一定の建築時期に該当すること、区分所有建物ではないことなどの要件があります。
対象になり得るかどうかは、登記事項や建物資料、相続後の利用状況などを確認して判断します。
売却期限も確認する
特例には売却時期の要件があります。
「まだ貸すか売るか決めていない」と考えている間に期限が近づくこともあります。
そのため、売却を決めてからではなく、貸すか迷い始めた段階で適用可能性を確認しておく方が判断しやすくなります。
相続した空き家を貸すと何が変わる?
ここが、貸す前に確認しておきたい重要なポイントです。
この特例では、一定の要件の一つとして、
相続から譲渡までの間に、対象となる家屋や敷地を貸付けの用に供していないこと
が求められます。
「数年だけ貸す」が後の売却に影響する場合がある
たとえば、
「2〜3年だけ貸して、そのあと売る」
という選択を考えることがあります。
しかし、賃貸に出したことで特例の要件に影響し、売却時の税負担が変わる可能性があります。
だからといって、相続した空き家は貸してはいけないという意味ではありません。
そもそも特例の対象とならない物件もありますし、賃貸収入を得ながら長期保有する方が合理的なケースもあります。
重要なのは、
賃貸募集を始める前に、特例の適用可能性を確認すること
です。
家賃収入と売却時の手残りを比べる
数年間の家賃収入だけを見ると、賃貸の方が有利に見えることがあります。
しかし、初期修繕費、空室、管理費、毎年の維持費、売却時の税負担まで含めると結果が変わることがあります。
そのため、家賃収入と、今売った場合の手残りを同じテーブルに載せて比較するのが基本です。
3,000万円特別控除で確認したい主な条件
制度の適用要件は複数あるため、ここでは貸す・売るの判断に影響しやすい項目に絞ります。
建築時期など家屋の条件
調査資料では、1981年5月31日以前に建築された家屋などが要件として確認されています。
築年数の記憶だけではなく、登記事項などで確認します。
相続後の利用状況
相続後に貸した、自分で住んだ、事業に使用したといった利用状況も確認事項になります。
特に、貸付けの用に供していないことは、貸すか売るかを決める前に確認しておきたいポイントです。
売却時期や売却方法
売却期限のほか、家屋の状態や売却方法に関する条件もあります。
建物を残して売るのか、解体して売るのかといった方針を決める前にも、適用条件を確認します。
相続人が複数いる場合
2024年以降の譲渡では、対象不動産を取得した相続人が3人以上の場合、1人あたりの控除上限が最高2,000万円となる取扱いがあります。
共有で相続している場合は、誰がどの持分を取得しているかも確認します。
相続登記・共有名義も先に整理する
税制だけでなく、誰がその不動産について意思決定できるのかも確認します。
相続登記は義務化されている
相続登記は2024年4月1日から義務化されています。
相続により不動産を取得したことを知った日から、原則3年以内に申請するルールがあります。
親名義のままになっている場合は、現在の登記と相続関係を確認します。
共有名義なら管理・費用負担も整理する
兄弟姉妹など複数人で相続している場合は、誰が管理するのか、修繕費をどう負担するのか、家賃をどう扱うのか、将来売却するときどうするのかを整理しておきます。
賃貸開始後に意見が分かれると、設備交換や修繕などの日常的な判断にも影響します。
貸す場合は家賃だけでなく税金・経費も見る
相続した空き家を賃貸に出した場合、家賃収入は原則として不動産所得の対象になります。
不動産所得は収入から必要経費を差し引いて考える
不動産所得は基本的に、
総収入金額 − 必要経費
で計算します。
代表的な必要経費には、固定資産税、損害保険料、減価償却費、修繕費などがあります。
ただし、税務上の所得と実際の現金手残りは同じではありません。
貸すか売るかの判断では、税務上の所得とは別に、毎年いくら現金が残るのかも確認します。
リフォーム代がすべてその年の修繕費になるとは限らない
通常の維持管理や原状回復に当たる支出は、修繕費として扱われる場合があります。
一方で、資産価値を高めたり使用可能期間を延ばしたりする工事は、資本的支出として減価償却する場合があります。
したがって、
「300万円工事したから、その年に300万円すべて経費にできる」
とは限りません。
大きな工事を予定している場合は、税務上の取扱いも事前に確認します。
相続した空き家を貸す・売る判断はこの順番で
確認事項を順番に並べると、判断しやすくなります。

1. 相続登記・名義を確認する
誰が所有者なのか、共有なのかを確認します。
2. 現状の売却価格を確認する
まず、今の状態で売ったらいくらなのかを把握します。
3. 3,000万円特別控除の適用可能性を確認する
対象になり得る場合は、家屋の条件、相続後の利用状況、売却期限、相続人の人数などを確認します。
4. 想定賃料を確認する
賃貸に出した場合の現実的な家賃を査定します。
5. 必須修繕費を確認する
安全・設備面を中心に、貸すために必要な修繕費を確認します。
最後に、貸す場合の年間実質手残り・管理負担・将来の売却可能性と、売る場合の売却手残り・特例の適用可否・現金化時期を比較します。
相続した実家は「貸す前」に売却時の税金まで確認する
相続した空き家は、
貸せるから貸す
ではなく、
貸した場合の手残りと、今売った場合の手残りを比較して決める
ことが重要です。
特に、相続空き家の3,000万円特別控除の対象になり得る物件では、賃貸に出すこと自体が後の適用判断に影響する可能性があります。
そのため、賃貸募集や大きな修繕を始める前に、名義、現状売却価格、税制、想定賃料、必須修繕費を一度整理しておくと判断しやすくなります。
横浜不動産総合窓口では、
「相続した実家を貸すか売るか、まだ決めていない」
という段階でもご相談いただけます。
まず不動産としての賃料、必要修繕、売却価格の選択肢を整理し、税務・登記など個別判断が必要な場合は、必要に応じて税理士・司法書士等の専門家への確認をご案内します。
