私道に面した土地を売却するときの注意点|42条2項道路でも通行権があるとは限らない

私道に面した土地では、建築基準法上の道路であることと、自動車通行権・配管権があることは別問題です。売却前に確認したい通行権や工事車両のポイントを整理します。

私道に面した土地の売却前に42条2項道路と通行権を確認する記事サムネイル

横浜不動産総合窓口では、横浜市内の空き家について、売却・賃貸活用・管理・解体を検討するための一般的な整理情報を掲載しています。

土地を売却するとき、「前面道路があるから問題ない」と考えている方は少なくありません。

確かに、建築基準法上の道路に接していれば、建築基準を満たすケースは多くあります。しかし、建築基準法上の道路であることと、私法上、自動車で自由に通行できる権利があることは別問題です。

結論からいうと、42条2項道路だからといって、車両通行や新しい配管工事まで当然に認められるとは限りません。

売却前には、道路種別だけでなく、誰の土地をどの権利で使えるのかを確認しておくことが重要です。

実際に東京高等裁判所では、古家を解体して売却しようとした土地所有者が、隣接する私道の所有者と争い、工事車両の通行は認められた一方、日常的な自動車通行権などは認められませんでした。

今回は、この判例をもとに、私道に面した土地を売却するときに知っておきたいポイントを解説します。

参考裁判例:東京高裁 令和4年12月15日判決(RETIO No.132「最近の裁判例から ⑾-隣地使用権-」)。本記事は裁判例の一般的な実務ポイントを整理するもので、個別案件の法律判断を示すものではありません。

42条2項道路だから安心、とは限らない

不動産広告では、「42条2項道路」という表記を見かけることがあります。42条2項道路とは、建築基準法上の道路として扱われる道路の一つです。

これだけを見ると、「道路なんだから車も自由に通れる」と思ってしまいがちですが、実際にはそうとは限りません。道路として認められていることと、隣地所有者に対して通行権を主張できることは、別の法律問題だからです。

2項道路やセットバックの基本は、不動産売却前に確認したい2項道路・セットバック・隣地承諾の注意点でも整理しています。

判例では何が争われたのか

今回の事案では、もともと一つだった土地が分割され、その結果、一部が袋地となりました。土地所有者は古くなった建物を解体し、更地にして売却するため、隣接する私道について次の3つを裁判所に求めました。

  • 解体工事のため工事車両を通行させたい
  • 今後も自動車で自由に通行したい
  • ガスや上下水道などを設置したい

解体工事のための通行は認められた

裁判所は、建物を解体することは土地の有効利用につながるため、民法209条の隣地使用権により、一時的な私道の使用を認めました。

工事内容も、約1か月半、昼間のみ、必要最小限のダンプカー・重機という範囲であり、土地利用のために必要な使用であると判断されています。

実務上のポイントは、解体工事に必要な一時的な通行と、将来にわたる日常的な車両通行は分けて考えることです。

しかし、自動車通行権は認められなかった

一方で、「今後も自由に車で通行できる権利」については認められませんでした。

その理由は、民法213条の囲繞地通行権は、分割によって袋地になった場合、原則として残余地に対して認められる制度だからです。今回通行したい私道は、その残余地ではありませんでした。

さらに、建物は空き家であり、解体後に第三者へ売却予定であったことから、現時点で日常生活上不可欠な利益があるとは認められず、自動車通行権も否定されています。

私道の通行承諾や近隣ルールは、相続した土地の前面道路が私道だったら?売却前に確認したい通行承諾と近隣ルールも参考になります。

新しい配管権も認められなかった

ガス・上下水道・電気などの設備についても、新たな配管権は認められませんでした。既存設備が妨害されている事情はなく、新たな権利を認める必要性がないと判断されたためです。

なお、現在の民法では、分割によって袋地となった土地の設備設置権についても、残余地に対して認められることが明文化されています。

売却前に確認したい7つのポイント

私道に面した土地では、次の点を確認しておくことをおすすめします。購入希望者から質問されることも多く、事前に整理しておくことで売却手続きも進めやすくなります。

1. 私道の所有者は誰か

登記簿、公図、地積測量図などで所有者と持分を確認します。

2. 通行承諾書はあるか

書面の有無、承諾の相手方、承諾内容、承継の扱いを確認します。

3. 車両通行まで認められているか

徒歩通行と車両通行は別に問題になることがあります。

4. 工事車両は通行できるか

解体、建替え、配管工事の際に必要な車両通行や近隣対応を整理します。

5. 設備配管はどこを通っているか

上下水道、ガス、電気の既存引込みと図面・台帳を確認します。

6. 新たな引込み工事は可能か

掘削承諾、設備設置権、工事条件を事前に確認します。

7. 袋地となった経緯はないか

土地分割の経緯によって、通行できる相手方や範囲が変わることがあります。

横浜でも珍しい話ではありません

横浜市内には、私道に接する住宅地、旗竿地、昔からの分譲地、狭あい道路沿いの住宅が数多く存在します。

そのため、「道路があるから安心」ではなく、どのような権利で道路を利用できるのかまで確認することが重要です。

再建築不可や接道義務の基本は、再建築不可物件で知らずに損するポイントもあわせて確認してください。現状有姿や免責で売る場合の説明事項は、現状有姿・契約不適合責任免責で売る前に確認したい、売主の告知事項でも整理しています。

まとめ

今回の判例は、解体工事のための一時的な私道の使用と、将来にわたる自動車通行権は別問題であることを示しています。

42条2項道路であっても、自由に車で通行できる権利まで保証されるわけではありません。私道に面した土地を売却する際は、通行権や設備設置権などの権利関係を確認することで、購入希望者にも説明しやすくなります。

2項道路・セットバック・隣地承諾を確認する 私道の通行承諾と近隣ルールを確認する 再建築不可物件の確認点を見る 売却前の説明不足トラブルを防ぐ

私道・通行権に不安がある土地を売る前に

横浜市・神奈川区周辺で、私道に面した土地、古家付き土地、再建築や通行権に不安がある土地を売却する場合は、道路種別だけでなく、私道持分、通行承諾、工事車両、設備配管、土地分割の経緯を整理しておくことが大切です。資料がそろっていない段階でも、確認すべき順番を分けて考えられます。