相続した土地は一括で売る?分けて売る?査定価格と宅建業法の注意点を裁判例から解説

相続した土地の売却は、査定額だけでなく、一括・分割それぞれの費用、手取り、販売方法を比べて判断します。

相続した土地の一括売却・分割売却と査定価格を検討するイメージ

横浜不動産総合窓口では、横浜市内の空き家について、売却・賃貸活用・管理・解体を検討するための一般的な整理情報を掲載しています。

相続した土地を売却するとき、多くの人が最初に気にするのは「いくらで売れるのか」という価格です。

ただし、複数筆に分かれている、広い土地である、旗竿地と整形地が隣り合っているといった場合は、査定価格だけを見て売却を決めるのは注意が必要です。一括で売るか、分けて売るか、現況のまま売るかで、価格の考え方や必要な費用・期間が変わることがあるためです。

この記事では、複数の土地を4,500万円で売却したあとに、売主が「もっと高く売れたはずだ」として媒介業者を訴えた裁判例をもとに、相続した土地を売却する際に確認したいポイントを整理します。

今回取り上げる裁判例そのものは相続によって取得した土地の事案ではありません。複数筆の土地を売却するときの査定価格、一括売却・個別売却の考え方を、相続土地の売却実務に応用して解説します。

4,500万円で売却したあと、「もっと高く売れた」と争った事例

今回の裁判では、売主が3筆の土地を所有していました。媒介業者との専任媒介契約では、本件土地1を2,200万円、本件土地2・3を2,300万円、合計4,500万円とする媒介価格が設定されていました。

本件土地1は113.09㎡、本件土地3は90.59㎡で、このほか公道側に2.51㎡の土地がありました。その後、買主が現れ、売主は4,500万円で売買契約を締結します。

裁判例に登場する本件土地1・本件土地2・本件土地3の配置イメージ
本件土地の配置を分かりやすくしたイメージ図

ところが契約翌日、売主は手付解除について媒介業者へ相談しました。手数料負担が生じる旨の説明を受けて解除は断念したものの、その後、売却価格そのものに疑問を持つようになります。

「一括で売るなら、もっと高く査定されるべきだったのでは?」

売主が平成23年にこの土地を購入した際、それぞれ個別に売り出されていた土地をまとめて購入しようとしたところ、「一括で購入するなら旗竿地による減額がなくなる」という理由で、当初の合計額より約80万円高い4,030万円で購入していました。

そのため売主は、今回の売却でも区画ごとの査定額を単純に足すのではなく、一括売却を前提として改めて査定すべきだったのではないかと主張しました。近隣の取引事例などをもとに、492万円の損害賠償を媒介業者へ求めました。

裁判所は「4,500万円の査定が不当とはいえない」と判断

裁判所は売主の請求を認めませんでした。媒介契約書には本件各土地の媒介価格として合計4,500万円が記載されており、個別に売却するときだけ4,500万円とする、一括売却する場合は別の価格にする、といった定めはありませんでした。

このため、4,500万円という媒介価格は一括売却にも適用される価格だったと解釈するのが合理的と判断しました。売主自身が購入した際の一括購入価格は4,030万円であり、今回の媒介価格はこれを上回っていたことからも、一括売却価格として合理性を欠くとはいえないとされています。

媒介業者が不要な減額をしたとは認められないとして、売主の請求は棄却されました。

相続した土地では「査定額」より「どう売る前提なのか」を見る

相続した不動産では、所有者自身がその土地を購入していないことも多く、取得価格、周辺の取引価格、土地形状の強みや弱みを把握していないことも珍しくありません。

査定額を受け取ったら、金額だけでなく、なぜその金額なのか、一括売却を前提とした査定なのか、分けて売った場合も同じなのかを確認することが重要です。

一括売却と分割売却では、価格が変わることがある

自宅と隣接する駐車場、複数筆に分かれた土地、旗竿地と道路側の整形地、アパートと隣接する空き地、比較的大きな一団の土地は、分割して売る方法も検討対象になります。

分けることで購入できる層が広がり、土地全体の売却額が高くなる可能性もあります。一方、分筆には確定測量、分筆登記、境界確認、造成、上下水道の引込み、道路や接道条件の確認などが必要になる場合があります。価格だけでなく、費用や時間も含めて比較する必要があります。

「分けて売れば高くなる」には宅建業法上の注意点もある

相続した土地だからといって、自分の土地を好きなように何区画にも分けて何度でも販売できる、とは限りません。自己所有地であっても、不特定多数の相手に分割した土地を反復・継続して販売する方法は、宅地建物取引業に該当する可能性があります。

宅地建物取引業を営むには免許が必要です。国土交通省の解釈・運用の考え方では、取引の目的、取得経緯、取引の態様、反復継続性などを総合して事業性を判断するとされ、相続で取得した物件は事業性を低くする事情の例として挙げられています。ただし、1回の販売行為でも区画割りして複数の者に販売する場合は、反復継続的な取引に当たり得るとされています。

神奈川県の免許申請の手引きでも、自己所有地を不特定多数の者に分譲することは宅地建物取引業に該当する旨が案内されています。国土交通省「宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方」神奈川県「宅地建物取引業 免許申請の手引き」を確認してください。

「2区画なら大丈夫」「3回売ったら宅建業になる」といった機械的な基準で判断できるものではありません。個別具体的な販売方法により判断されるため、分割販売を検討する場合は、実際の計画に応じて行政庁や専門家への確認が必要です。

相続土地では「売却価格」ではなく「最終的な手取り」で比べる

一括売却が4,500万円、分割売却が合計5,000万円という査定であれば、数字上は分割売却の方が500万円高く見えます。しかし分割するために、測量費、分筆登記費用、造成費、水道工事費、解体費、売却期間の長期化に伴う負担が発生する可能性があります。

比較すべきなのは売値だけではなく、必要経費やリスクを差し引いた最終的な手取り額です。一括売却では価格が少し低くても、測量や造成を最低限に抑え、早く現金化できるのであれば、その方が合理的な場合もあります。

相続した土地を査定するときに確認したい7つのこと

  1. 査定価格の根拠は何か
  2. どの成約事例を比較対象にしたのか
  3. 一括売却を前提とした査定なのか
  4. 分割した場合はいくらになるのか
  5. 分筆や測量などにどの程度の費用がかかるのか
  6. 分割販売する場合、宅建業法上の問題はないか
  7. 諸費用を差し引いた最終的な手取りはいくらになるのか

RETIOの判例解説でも、売主は複数業者に価格査定を依頼するなどして価格を十分理解・納得し、自らの責任で決定することが重要と整理されています。

一番高い査定を出した会社が、一番高く売ってくれるとは限らない

複数社から異なる査定額が出たときは、額面だけでなく、その数字に至るロジックを比較します。周辺の成約事例なのか、分割する前提なのか、一定期間売れなければ値下げする想定なのか、業者買取価格なのか、一般市場での想定成約価格なのかを確認してください。

売却を開始してすぐ満額の申込みが入った、同時に複数の購入希望者が現れた、想定以上に問い合わせが多いといった場合も、契約前に価格設定を再確認する余地があります。早く売れたから価格が安すぎたとは限りませんが、価格に納得するのは契約する前です。

相続した土地は「いくらで売るか」より「どう売るか」から考える

相続した土地について、一括で売るか、分けて売るか、古家を解体するか、そもそも今売るかが決まっていない段階でも、土地の条件と売却方法を整理できます。

想定売却価格、必要費用、売却までの期間、手間、法的な注意点を比較して、現実的な方法を検討することが重要です。査定額だけを比べるのではなく、土地の条件と売却方法を先に整理することが大切です。

出典・注意事項

  • 東京地方裁判所 令和元年7月5日判決
  • 一般財団法人 不動産適正取引推進機構 RETIO No.128「最近の裁判例から(4)-査定価格の説明-」
  • 「媒介業者が価格の修正を行わず安価で売却させられたとした売主による損害賠償請求が棄却された事例」

本記事は公表された裁判例と行政資料をもとに一般的な確認事項を整理したものであり、個別案件に対する法律相談ではありません。査定、分筆、造成、販売方法、宅地建物取引業法上の取扱いは、土地の状況や具体的な販売計画によって異なります。必要に応じて行政庁、宅地建物取引士、土地家屋調査士、弁護士などの専門家へ確認してください。

相続した土地の売却方法を、決める前に整理しませんか

一括で売るか、分けて売るか、現況で売るかが決まっていない段階でも、土地の形状、接道、複数筆の関係、必要費用を確認し、売却方法の選択肢を整理できます。分筆や販売方法に関する法的判断が必要な場合は、行政庁や土地家屋調査士・弁護士などの専門家への確認をご案内します。